趣味の王様らしい2006/04/02 21:25

無線の免許を取得した。『4級アマチュア無線技師』昔の『電話級アマチュア無線技師』と同じらしい、アマチュア利用目的のみの資格なので国家資格とは言え履歴書等に書いてもなんの足しにもならない。当然ながら取得目的は履歴書に書くためとかではなく、主目的はバイクでの運用(無線を使う事を運用というのがツウらしい)

免許が無かった今までもバイクにはこれみよがしの長いアンテナを立てた本気装備をしてあったのだが、免許が無い事にはしゃべる事ができない。聞くだけなら合法らしいので、仲間同士の会話を聞いているだけなら問題は無かったのだが、でもやっぱねぇ・・。

という事で前々から免許を取ろうと思っていたのだが、なかなかタイミングと開催場所の都合が折り合わずノビノビとなっていた。で、この資格、取得するには二つの方法がある。(1)国家試験を受ける(2)国家試験免除の講習会を受け、修了試験に合格する。例えてみれば、車の免許を取るのに試験場に行くか実地試験免除の公認教習所に通うか、という違いである。(1)の場合はコツコツ自分で勉強しなくてはならないが(2)は既定の講習を受ければ合格率の高い試験を受ける事で取得が可能である。

金額的には前者は約5千円、後者は約2万強と、かなりの金額差があるが、どんな勉強すれば良いのか、いや、それ以前に自分は日々コツコツとそんな勉強するんだろうか、という事を考えた結果、今回は(2)の講習会を受講する事にした。講習内容は法規6時間、工学4時間の10時間、これを2日間で受講するというもの、最後に修了試験1時間があり、法規、工学、それぞれ各10問中6問以上正解であれば合格。片方が10点満点でも片方が5点以下だと不合格である。

意外に厳しかったのは遅刻管理、朝の遅刻は勿論のこと、講習途中に何回かある都度の休憩の後の講習開始時刻に遅れてはならない、1分でも遅れると当事者は1時間の補講を受けなくてはならないというきまり。全員が揃ってから始まる雰囲気ではあったのだが、それでも休憩時間が過ぎても戻って来ないヤツが居たようで上記の時間にプラス1時間の補講時間が加わった。補講を受けるのは遅刻した対象者は当然義務だが、その他の人は任意なので1時間の休憩時間のようなもの、でも、帰る時間が1時間遅くなるわけで良い迷惑である。

では講習会の内容はどうかというと・・講師にもよるのだろうが、授業はノンビリとした雰囲気で進む、教科書に沿って進められるのだが、出題ポイントは決まっているらしく「ここにはアンダーラインを引いておいて下さい」というところが数箇所、どうやらそこだけを憶えれば良いようだ。教科書と一緒に配布された模擬試験問題集、受講後になんとなく理解したのだが、どうやらこの問題集の問題と答えを丸暗記すれば試験は楽勝だったようだ。少々恐れていたのが無線工学、講義前にざっと教科書を眺めてみたのだが結構マニアックなのだ、例えると「VMとCRのキャブ形式の違いをこの中から選択せよ」「CDIとフルトラの違いを選べ」、という問題が原付バイクの免許試験にあるようなイメージ。まぁ、免許たるもの、ある程度は深く知っておくべきなのかもしれないが・・。

ここで受講者に目を向けてみよう。自分の事は完全に棚の上だが、参加前から一体どんな人たちが受けるのだろうとの興味はあった。頭の堅そうなマニアな雰囲気の方々が多いのではないかと思っていたのだが・・受講者は50名は居ただろうか、確かに予想通りのマニア風な人も居たし、マジメそうな家族で参加している人たちも居たのだが、目を引いたのは30歳前後のヤンキー風?な方々、全員が友人知人というわけでは無いようだが、数名ずつのグループで参加していたようだ。その中には女性もちらほらといたが休憩時間には全員で仲良く喫煙所に集合して車座に座り”ぷっハァ”と煙を吹いていて、爽やかという言葉とは縁遠い雰囲気をかもし出していた。当然ながら途中の授業に遅刻して来たのはコイツらの誰かで、受講中爆睡してたのもコイツらの誰か、一言で言うと場違いな連中、なんで免許取ろうと思ったんだかが謎である。

次に講師はどんな人か、これがまた想像通りというか・・。法規と工学と二人の講師が居たのだが両名共にマニアック。勿論、国が認めたちゃんとした機関に属する方々なので、世間一般には普通の人だと思う。隣近所に住んで居たとしても全く害無く普通に接する事ができる人たちだと思う。が、やはりちょっと違う。一人の人は教師然とした50歳代くらいの人、講義の途中に雑談を交えてなかなか慣れた様子なのだが、時々変な事を言い出す。直接書くとマズそうなので例えてみると。自動車教習所の教官が・・「この道は40km/h規制の道路ですが、80km/hでも捕まる事はありません」「シートベルトしないで交番の前を通っても捕まりませんでした」とか言ってるようなもので、ぶっちゃけトークが多く、受講者みんな引き気味。しかも、マニアックネタなので、初心者には縁遠い話・・・ちょっとした自慢なのかもしれないけど初心者に通じるような内容ではありません。

もう一人の講師はちょっと若目で更にマニアック度の高い感じ、授業をするのが楽しいらしく。当人自ら「人前で(無線の)話しができるのが楽しいんです」と言っていた。教科書の項目にアンテナの話しがあるのだが、そのくだりになった時は「アンテナの話しは特に好きでしてねぇ、アンテナの話しだけで一晩中話しする事ができるくらいです」と、おっしゃる。本当にやられたらとんでも無く迷惑な話しであるが幸い授業時間は限られている。免許を取る人みんなが”好きだから取る”と勘違いされても困る。アマチュア免許なので興味がある人、趣味としたい人が多いのかもはしれないけどね。

考えてみると、”オタク(最近聞く機会が減ってるのは気のせい?)”の元祖は無線好きな方々に起源があるのではなかろうか、現在のオタクやらマニアというのは、コンピュータ系、アニメ系、その他(なんか良く判らんが)あるが彼等の聖地である秋葉原はその昔は無線機(ラヂオ)マニアの聖地でもあった筈、駅の脇の雑居ビルには無線機を売る店がゴチャゴチャと詰まっていた憶えである。

インターネットや携帯電話が爆発的に普及している現代では無線機の立場は苦しいところにあると思われる。簡単とは言え面倒な国家資格に縛られているがために容易に使う事もできず敷居が高い、唯一のメリットは装備と免許維持費さえあれば電気代以外は一切費用が掛からないという点、相手と何時間話しても実質タダなのである。しかも到達エリアに制約は無い、山奥でも衛星経由で利用可能らしい。

とは言え、現在携帯電話を使っている人が全員無線機(ハンディトランシーバ)に突如として切り替えたとしよう。利用可能な周波数はそれほど沢山無いので混信しまくりである上に秘話は禁じられているので、ナイショ話しもみんなに筒抜け状態となり、とんでもないパニックになると思われる。

因みに、何故講習会だと免許が取り易いかというと、試験問題は法規、工学、それぞれ10種3パターンの計60問しかなく、その中からそれぞれ10問づつ20問出るから。講師もそれは承知で上手に60問を教えてくれる。つまり講義を聞いてなくても、講習開始時に渡される模擬試験の60問の問題と解答を憶える事ができれば良いのである。60問と言っても60種ではなく上記の通りそれぞれ10種を3パターンなので日本語ができて多少の頭があれば失格する事はまず無い。修了試験の時間は1時間取ってあるが、全20問の解答に要する時間はせいぜい5分である。どうやらずっと寝ていた彼も合格できたようなのでその程度の試験である。もっとも、難しい事は判らなくても講義を受ける事によって無線を扱う者としての心得は頭に入るので、それが判っていれば使っても良いよ、というものだとすれば講習会&免許の意義はあると思う。

これらを管理推進している某協会の案内文に以下のような記載があった。参考迄。
「電波法を遵守したアマチュア無線の運用は、社会に貢献できる立派な趣味の王様です。」